ダウン症外来 その24

今回は前回にあげたダウン症の特性について説明を加えます。くわしくは今まで書いてきましたので、もう一度見直していただけると理解が進むと思います。

ダウン症の特性から

@     ダウン症それ自体は病気でも障害でもなく人類のバリエーションである

A     尊厳をもった立派な人間であり、特性以外は全く「普通」である

この二つは当然のことですよね。でも意外に忘れられていることかもしれません。もしかして、あなた自身も、尊厳をもった大事な人間であることを時々忘れてはいませんか? 一人ひとりが大事にされるためには、政治や経済も生活者自身が作り支えていかならないのですが … もしかして、優れた英雄が出て良い社会を作ってくれないか、誰かが期待通りにやってくれないかと望んではいませんか? 本当の意味で、人間としての自分をまず大事にする、それによって、我が子は「自分が生んだ立派な人間」と認められるので、自信をもって育児ができるでしょう。

 

B     永遠の子どもというのは誤り、それは環境で作られる

ダウン症だけでなく、すべての発達障害をもった人は幼く見えます。それが、周囲の対応で成長発達がおさえられてしまうと余計発達が遅れます。赤ちゃん扱いされると子どもは楽かもしれません。でも、年齢が進むと、それにたえられなくなり問題行動も出てきます。それは一般の子でも、ダウン症の子でも同じです。「過保護」は「適切な保護」と全然違います。過保護は子どもを追い詰め、発達を阻害する誤った対応なのです。

 

C     発達はゆっくりで、考えて理解するのにも時間がかかる

発達がゆっくり(遅れる)と言っても、心身全ての発達が遅れているわけではありません。ダウン症があっても、遅い発達のほかに早い発達と普通の発達がみられます。それも、ダウン症の子であれば共通なところと人によって異なるところがありますが、彼らを温かい目で観ていけば自ずからわかってくるでしょう。そのうち発達の遅い(ゆるやかな)部分、特に学業を達成するには時間をかける必要がありますが、それだけに注目していると、普通や早い発達も抑えられる可能性があります。なお、身辺自立など日常生活の力は一般の子どもとさほど変わりません。

 

D     長期記憶が良いが、時間の経過を把握するのは苦手で学ぶ必要あり

皆さんのお子さんは前のことをよく覚えておられるでしょう。記憶力が悪い私には驚異です。

でも、その記憶がどのくらい前かということはわかりにくいようです。昔経験した良いことも嫌なことも、現在のようにありありと目に浮かぶようです(だから記憶が良いわけですが)。目に見えない時間の流れを理解することはかなり高度で難しいことですから、予定表を作ったりタイマーを使ったりして、目で確かめられる工夫が役に立ちます。

 

E     知的発達障害があるので、学ぶのに時間がかかるが勉強好き

ダウンの人のほとんどに知的発達障害があります。そのため、学業を一般の子と同じスピードでやりとげるのは無理ですが、勉強は嫌いではありません。学んで新しいことを知るのが好きなのです。もし勉強が嫌いな人がいたら、それは勉強を強いられたり、嫌なことを何度も繰り返しやらされていたりしたからでしょう。

学業は、その前に準備段階が必要です。準備段階とは、基礎となる感覚がしっかり育っていることや、身辺自立がかなりできていること、それに、聞くこと話すことがある程度できていることなどです。つまり日常生活が学業以前にとても大事ということです。感覚は生活すべてに必要で多種多様ですが、大きい/小さい、高い/低い、重い/軽いなどのような量感覚も含まれます。ダウン症の子で、知的な面での大きな合併症がなく、適切な関わり(つまり、赤ちゃん扱いせず、発達レベルを大きく超えない対応)がされていれば、誰でもこの段階に到達できるはずです。

 

F     抽象的、漠然とした話は理解しにくいので説明は具体的に

  知的発達に障害ある人たちは抽象的なことが苦手です。言葉が通じる人であっても、抽象的な話は聴いて理解しにくく、具体的なことで理解するために内容を変えていることすらあります。それでも、難しすぎなければ理解は可能ですから、具体的な話をゆっくり時間をかけていけば、自分の頭で正しく考えてくれるでしょう。具体的なことから抽象化することはある程度可能です。

 

G     心優しく、ひとの気持ちを汲み、思いやりに富み、感受性強い

親ごさんや周囲の方は誰もが気づかれているでしょう。この特性があるので、ひとに愛されるのですから大きな長所です。ひとの役に立ちたい気持も強く、すぐ行動で表してくれます。

しかし、短所が見方によって長所になるように、長所も短所になることがあります。親切心も、自分で考える機会がなく、自分というものが育っていないと(心理的自立不全)、他の人と一体化してしまい、お節介になりかねません。そうするとうるさがられ、いじめだと誤解されることすらあります。ダウンの人たちが心を病むのは、人間関係でつまずいたときなのです。

障害のある人に対して優しければいいということはないですよね。誰でもやってほしくないことはあります。お世話係はほどほどにさせるのが園や学校の先生の努めでもありますが、ダウンの人たちにも、本当の親切とは何かを、わかりやすい言葉で教えていく必要があります。

 

H     他の人が争っているのが嫌いで心を痛める

  ダウンの人は平和を好みます。周囲の人が大声で議論しているだけでもケンカと思って、泣き出したり、逃げたりするでしょう。仲裁しようとする人もかなりいます。彼らは争いは嫌いなので、夫婦げんかはやらないようにしているとか、すぐにやめるというご家族の声もよく聞きます。自分から大きな声をあげることはあまりないようですが、大きい子にかかっていったり、きょうだいげんかが絶えないとか、取っ組み合いのケンカをする子はかなりいます。しかしこれは争いと思われてはいないでしょう。

  ダウン症の人たちは争いは嫌いですが、生きるために闘いをしないわけではありません。なかには闘わず、避けるタイプの人もいますが、闘って勝ち取る人もいます。闘いにはさまざまなやり方があり、きょうだいの物を見ていないとこっそり使うのも、ニコっと笑って意志を通そうとするのも、巧妙な「闘い」だそうです。これはダウン症の人たちの得意技のようです。

 

  これ以下は次回に ……

I     目で覚え、観察力・形態認知・空間認知に優れ、模倣上手

J     言葉で表現するより行動にあらわすほうが早い

    K 耳から理解するのは比較的弱く、話をしっかり聴くのも苦手

L リズム感に優れ、体でリズムをとるのが上手

M 想像力や空想力が豊かで、適度ならばストレス解消にもなる

N 独り言もストレス解消に効果があるが、場所を選ぶ必要あり

O こだわるのは保守性、美学のあらわれである

P 手は器用、ただ動作が幾分遅く、経験不足で手・指の筋が弱体化

Q 筋緊張低下(低緊張)があり筋量は一般より少ない

R 一般人よりも罹りやすい病気と罹りにくい病気がある

S 薬が効きすぎ、薬の副作用がでやすい傾向がある