静岡
ダウン症児の将来を考える会

Down症児(者)の健康管理・療育と留意事項」  
日暮 真先生
2005.5.29 総会第二部 講演会


 <司会者>

それでは午後の第二部始めさせて頂きます。今日は日暮真先生をお招きしてダウン症児・者のかかりやすい病気についてと言うことでお話をして頂きます。資料の中に先生のプロフィールをお書きしましたので現在、先生がご活躍されている所の部分をちょっとご紹介させて頂きます。先生は昭和9年にお生まれになりましてずっとこういう経歴をたどっておられますけれども、研究もしながら子供達に巨大なご尽力いただいております。それでダウン症の外来で静岡の藤枝市立総合病院に月一回診療に来ていただいて、診察して頂いています。この中にも予約をとり、先生に診ていただいてる方もいらっしゃると思いますけれども、都立の多摩療育園ということころにも月2回行ってらっしゃいます。それから、都立八王子小児病院に月1回、こどもの城というところが渋谷の方にありますけれども、ここはいろいろなワークショップだとか総合的な、子供達の支援というよりも参加できるようなイベントを、やっているところです。そこに小児保健部というのがございまして、そこの外来を相談日として設けて、先生がお一人でとっても大変だったようで、高野先生も一緒に相談にあったっておられます。瀬川小児神経科クリニックというところでも月1回診療。ほんとうにお忙しい中でご活躍されて、子供達にご尽力いただいきご指導いただいております。今日はいいお話が伺えると思います。じっくり聞いてお勉強していってください。先生よろしくお願い致します。

<日暮先生>

みなさんこんにちは。ただいまご紹介いただきました日暮と申します。座らせていただきますのでお許しください。私は今日「ダウン症児の将来を考える会」の牧田会長からお招きをいただいて喜んでお邪魔をさせていただきました。今ご紹介ありましたように藤枝の市立病院に月に1回伺っておりますので、静岡は非常に気持ちの上でも親しみのあるところです。実は藤枝の市立病院と関わりがあったのは、私が昭和37年に大学を卒業したので昭和38年、あの頃1年インターンがありましたので、小児科医になったのは38年からです。1年間大学でやってから、東大の小児科に入ったもんですから東大の小児科で、いくつかの地方の病院とコミュニケーションがあって、その中のひとつに藤枝の市立病院、当時は志太病院といってましたけども、そこに4ヶ月ばかり私は派遣で参りました。当時まだ独身だったものですから、ご存知の方がおられるか二階堂先生とおっしゃる非常に名物の院長がおられまして、二階堂先生のお宅の隣の独身寮で4ヶ月を過ごしました。で、その時はもちろん一般の小児科をおこなっていまして、特にダウンをやってたわけではありません。それからしばらく経って大学に戻ってからダウンのお子さん方と関わりを持つようになって、それから藤枝の市立志太病院の中にダウンの外来ができて、はじめたのが昭和46年のたしか10月からだったと思います。それからずっと月にいっぺんずつ外来をやらせて頂いております。

まあ前置きはそのぐらいにいたしまして、今日はダウンのお子さんっていうか大人の人も含めて、かかりやすい病気ということでありますけれども、手元の資料にありますように生まれてからずっと成人になるまでの間にそういう各人生のライフステージ、大きく乳児期から成人期まで分けまして、それぞれに起こりやすい病気について皆さん方と一緒に考えたいと思っております。

私達が学生の頃にダウン症のことを科学の講義の中で習った時代は、ダウンの子供達っていうのは非常に短命であるということを教えられたわけですね。病気に対する抵抗力が弱いと。なかなか長く生きることが難しいということで当初、私達学生の頃は平均的な寿命というのは20才までいかなかったんですね。10代、国によっていろいろデータがありますけれども10代でした。で、それが今や大変長く生きれるようになってきた。で、私達の試算ではだいたい50才ぐらいというふうなデータを示したことがありましたけれども、まあほぼそのあたりまで平均寿命があるのではないかという風に私達は考えております。寿命が長くなったっていうことは非常に私達にとっては勇気づけられることですし、ご両親方にとっても非常に喜びだろうと思います。しかし私達は、ご両親ももちろんですけども単に寿命が長くなったっていうことだけで安易に喜ぶべきことではなくて、やっぱり真に問われるのはその中身であると思います。実際に、例えば20才たらずだったのが50才に伸びたということで、ただ長生きできるということだけではなくって、例えば30才伸びた寿命が本当に本人にとっても一所懸命生きて楽しい人生だったと思えるような歩み、そしてご両親にとってもまわりの人たちにとっても非常にそれが充実感を与えることができる、そういう人生であってほしいというふうに願うわけです。じゃあそれをするためにはどういうふうにしたらいいだろうか、またそれぞれの人生の中でどういうことが起こってくるのだろうかということも体の健康っていうことと絡めて、今日これからの約1時間半ぐらい一緒にお考えいただきたいというふうに思うわけです。あとでご質問がおありになればその時にまたご質問いただきたいというふうに考えております。

まず最初に、ダウンのお子さんがほんとうに充実感を持って、生きがいのある人生を歩めるというその基本にあるのは何かと言ったらば、やっぱりご両親、特にお母さんがですね、お父さんももちろんそうなんですけども、特にお母さんがしっかりと生まれてきたばっかりの赤ちゃんを精神的に受け止めて、そして後ろにおられるお父さんもそれをまた支えていくと、それがもう一番の基本的なことだろうと思います。つまりお母さんが、例えば生まれてすぐ「ダウンですよ」と、生まれてすぐではなくても、少し経ってからですね「お宅の赤ちゃんはダウン症ですよ」とこう言われた時、皆さん方たいへん大きなショックを受けられたご経験が、おひとりおひとりおありだと思いますけれども、ショックではあるけどもきちっとお子さんを受け止めて、これからしっかりと育てていこうという決心が持てるか持てないかということがとっても大事だろうと思います。そこで私が今日の資料の中で1番目に診断と告知というふうにいたしたのはそのことを言いたかったわけです。まあ私達はその告知をしなければならない立場にあるわけですけれども、いろいろ告知の仕方ってのはあるだろうと思います。でもここにいらっしゃるお母様方おひとりおひとりが、あの時のことを思い出されておひとりおひとりみんな違うご経験、あるいは感情お持ちになってるだろうと思います。私達は、医学的なことで表現をするならば母子関係がきちっと確立した体制で受け止める、お子さんを受け止められる、というチャンスをやっぱりきちっと見極めた上で伝えていくということが一番大事だろうというふうに思います。それが生まれてすぐの時もあるだろうし、なかなかこう受け止めきれないご両親お母さんおられます。見ていて、そういう場合にはやっぱりケースを選んで少し時期を選んで告知をするということも私達はすることがあります。ですから伝えられ方、伝えるタイミングというものが少しずつ違うだろうと。欧米では先天的なハンディキャップがあれば、もう生まれてすぐ、なるたけ早く告知するってことが原則だと言われてますけども、それは間違いではないけれども受け止める側のご両親のいろいろな精神的な状況を見極めて伝えていきたい、というふうに告知する側は思っておりますので、そこいらへんも含んでおいて頂きたいと思います。

次に乳児期の問題に進めていきたいと思います。そこに乳児期に起こりやすい疾病というのがいくつか書いてありますけれども、わりあい起こりやすいのは、生まれてすぐの頃なかなかおっぱいを飲まない、体重がなかなか増えないというお子さんも多く経験を致します。そこで母子健康手帳に書いてあるような、母子健康手帳には普通の健常な子供の発育の体重曲線というのが書いてあると思いますけれども、あれに達しないお子さん方ていうのは結構たくさんおります。もちろん入ってどんどん体重も増えるし身長も伸びて普通のお子さんと同じように大きくなるお子さんも勿論います。いるけれども大きくならないお子さんもいる。大きくならない場合にますます赤ちゃんを育てる意欲ってものを失ってしまいがちにともすればなります。ただでさえ非常にショックを受けている状況で赤ちゃんがまたこれ育たないってことはとっても辛いことですので私達はそういうお母さん方を少しでも励ますという意味で、ダウンのお子さん方の発育の曲線ていうのを作って、こういうお子さん方の発育ていうのはこうなんですよってことを伝えたい。と、いうことで資料の中の図の1と言うのがありますけれども、こういう表を作ってみたわけです。これは母子健康手帳に書いてあるカーブをちょっとモデファーしたものですけど、実線で書いてあるのは健常な乳児の男の子の発育曲線です。これは10%と90%のカーブですけれども、今の子供達の母子健康手帳のカーブていうのはこれと少し違います。今10%でこれ上下切ってあるんですけれども、しばらく前の母子健康手帳から、これでもやっぱりまだ、上下80%から外れますととっても気になるんですね、お母さんとしては。だもんですから健常なお子さん方の場合でさえがっかりさせないようにって言うんで、上下3%に切ってあんですね。97%、下が3%ていう上下3%が落ちる位の非常に幅の広い発育曲線が今の母子健康手帳からはなっております。平成14年にできた母子健康手帳からそうなっていると思います。これはその前の10%のですけども、同じ方法で私達がダウンの子供達の発育曲線を作りました。これは今からもう20年近く前に作ったですけれども同じ方法で作ったダウンのお子さんの男の子の乳児の発育曲線、この斜線の部分です。これだけずれてんです実は。つまり物差しが少し違うんだってことをきちんと認識いただいて、普通の子供達の発育曲線に当てはまらないからと言って落胆することはありません。ちゃんとこの斜線の部分に入ればいいんだと、そういう認識を持っていただきたいと言うことでこういう曲線を作りました。これはたまたま乳児の男の子ですけれども乳児の女の子の場合も同じような図がありますし、6歳までの学校に上がるまでのカーブもあります、男の子と女の子それぞれカーブを作ってあります。これに入ればいいんだと、そういうことで、体重の増加がどうも良くないって言われ、嘆かれるお母さん方を少しでも励ますためにこういう図を作ってその検診に臨んでいるわけであります。

また乳児期の保健というところの、こんどは併発し易い疾病というところを見ていただきたいと思います。けれども、ダウンの赤ちゃん、起こりやすい合併症があります。心臓がまずありますね。心臓はダウンのお子さんの約50%2人に1人が何らかの先天性の心疾患を持っております。もちろん種類は色々あります。心房中核欠損、心室中核欠損、あるいは心内膜欠損症と色々ありますね,種類は問いません。それから疾患の程度についても問いません。とにかく軽いものも含めて2人に一1はあるという事で私達は必ずダウンのお子さんは心臓の専門のドクターにチェックを受けるようにしてもらってます。私、心臓は専門でないので必ず心臓の専門家に1回チェックを受けると言うことをおすすめしております。私達が小児科医になったばかりの頃はほとんど心臓の手術の摘要があってもしてもらえなかったです。ダウンのお子さん方の心臓の手術をする心臓外科の先生が怖がって手を出さないんですね。でも今はどんどん手術をしてくれる様になって、これがやっぱり寿命を大きく伸ばしてくれた大きなファクターの1つだとおもっています。

 それから肝臓の疾患というのが、時々肝機能の障害が初めからあるお子さんも居ますので、肝機能を必ずチェックするようにしております

それから甲状腺の障害これは後から触れます幼児期、学童期、成人もそうですけれどもどの時期でも甲状腺の障害というのは結構あります。こういうホルモン系統の障害っていうのは、ご存知のように機能が後進する場合と低下する場合と両方あるわけです。甲状腺て言う内分泌のホルモンの障害というものは、ホルモンが出すぎちゃうのと非常に出が悪いのと両方あるわけです。乳児期の場合はですねえ、甲状腺の障害があった場合には機能の低下している方が多いですねえ、いわゆる甲状腺の機能低下症という感じで、普通の赤ちゃんが機能低下を起こすと、いわゆる筋肉が非常にダラッとしちゃってる状態で無気力で舌がわりあい大きくて、べろを出してる。なんかこうダウンのお子さんに良く似てますよね!。でダウンのお子さんでもこういう事があることがありますので甲状腺の機能をチェックする必要がありますけど今、新生児のマスクリーニングがありますのでこれでかなり早く引っ掛けることが出来ますのでこれは私達助かっております。

 それから血液の疾患、血液の中で特に白血病ってのはご存知だと思いますけれども、ダウンのお子さんは普通のお子さんよりも併発し易いという事を言われています。特に新生児期、乳児期の割合早い時期におこったのは本当の白血病ではなくて、なんかこう白血病の様な症状があって一時的にそういう状況になっている事もあります。しかし本当になっている事も有りますからやっぱり白血病のことも頭に入れながら一応念のための血液の検査が必要だと思っています。

それから目とか耳って事ですけども、目とか耳の障害っていうのは私は非常に重要な事だと思っております。何故かといいますと目の障害とか視覚とか聴覚というのは人間の色々な感性を養うというんですか、外からの刺激を十分に受ける為の重要な器官ですから、そういう所に障害があると、外からの刺激を十分に受けられない事がある。だけども早く見つけてあげれば対応できるという事です。やはり特に聴覚はそうでして、音の刺激がきちっと受けられるっていう事は大切な事ですので、聴覚のチェックというのはなるべく早くして置く必要が有ると思います。新生児の聴覚のマスクリーニングが随分行われるようになってきております。ですからできればそういう意味のチェックを受けられなかった場合には、音に対して反応が有るか、無いかって事をやっぱりきちっと抑えておく必要が有ると思います。いわゆる難聴というのは大きく分けて二つあって1つは音をもともとキャッチする、そういう所のセンサーが障害がある場合と、聞こえているんだけれども二次的に例えば中耳炎を起こしてしまって中耳に液が溜まったために、音が聞こえなくなる。廃液をしてやれば音が聞こえる訳です。ですから何で聴覚が措かされているかという事を、やっぱりきちっとチェックしてもらって正しい対応をしてもらう必要があるかと思います。白内障は後でも出てきますけれども、先天的に白内障というお子さんが時々おります。私が藤枝で診ているお子さんも、今はもう随分大きくなりましたけども小さいときから診たお子さんで先天的な白内障のあったお子さんがおります。ですから白内障ってのはチェックも重要かと思います。そういった様な訳で乳児期の場合にはこういう所に心して見ていかなければいけませんけれども、もう一つここに点頭てんかんというのが有ります。

点頭てんかんというのは普通のお子さんでも勿論おこります。発症は時期が有りまして非常におこりやすい時期というのは生後6ヶ月から1歳半の間におこりやすいんですね。ですから私共は乳児期の全般の3ヶ月から6ヶ月くらいの間に一回必ず脳波のチェックをするようにしております。点頭てんかんというのは子供のてんかんの一種です。てんかんというと皆さん方頭に浮かべられるのは、急に意識を失ってばたっと倒れて足をガタガタ震わせるタイプのてんかんを想像されると思いますけどあれは大発作っていって、てんかんの1つです。子供のてんかんというのは色々有って7つか8つくらい種類が有りますけれども、点頭てんかんて言うのはそういうタイプではなくて、頭をこくっとこう点頭っていわゆるコックリすると言う、頭をこう前に首を倒して、そして手足がやっぱりこまかくガタガタ震えるやつです。これは脳波をとると波がでてきまして、かなり早く診断がつくと。もうひとつやっかいな事はなかなかコントロールが難しいてんかんであるという事ですね。さっき申し上げました大発作型のてんかんてのは、抗てんかん薬がわりあい良く効きやすいですが、点頭てんかんてのはなかなか効かない、コントロールが難しい場合があります。ですので早く見つけてもコントロールが難しい場合もありますけれども、やっぱりやれる手立てはうっておく、そういう事ではきちっと早くチェックをしておく必要があるだろうというふうに思います。私の印象では普通のお子さんも、点頭てんかんになるお子さんはありますけれども、普通の子よりダウンの子はちょっと点頭てんかんの合併率が高いじゃないかなという風に印象を持っております。まあ病気のことはそれくらいですけど、あと、おっぱいをなかなか飲まないというお子さんがけっこういるということですが、さっきお話したような母子健発育曲線を見ながらですね、その、なかなか体重が思うように増えてくれない、おっぱいを飲んでくれないけれども、なんとかお母さんが、その失望しないですこしでも育てる意欲を失わないように育てていただきたいということでは、是非頑張って下さいということを励ましながらやるわけです。

そして曲がりなりにも少しずつ大きくなってきて、離乳食が始まるわけですけれども、離乳食もなかなか飲み込んだり、かんだりするのがうまくいかないというご経験がおありだろうと思いますけど、なんとか普通のお子さんよりペースがおそくても、少しずつ先へ進んでいっていただくということです。

ただ、離乳食を進めていく段階で、いつも私が申し上げるのは、結構はじめ体重が増えないものですから、お母さんの心理としては、食べないものの中で少しでも子どもが喜んで食べてくれるのは嬉しいです訳ですよね。ついそういうものがいきがちです。そうすると、ご経験がおありのお母さまがたもおられると思いますが、すきなものは白いごはんですよね。それからパンとか麺類ラーメンとか、そういうのはとっても好きなお子さんが多いですよね。そういうのっていうのは、すぐお判りだと思いますけど、肥満につながりますよね。小さい内は、体重が増えない時は肥満はなかなか気にならないと思います。だけど、そういうお子さんがたをお持ちのお母さんがたに、私はよく申し上げるのですが、将来中学生高校生になって、こんなに太ったダウンのお子さんがたをちょっと想像してくださいと、ああなっちゃってから食べ物の嗜好を変えようったって無理です。だから、今はそんなに食べないことも少し目をつぶって、なんでも食べれる子に。嗜好を、食べ物の嗜好ってのを変えようとしてもなかなか無理ですと。だから小さい内から何でも食べれる様に、出来るだけ育てていただきたいということを申し上げております。

それから予防接種その次にやります。予防接種は、かっては、ある時期はなかなか予防接種による副作用とか、いろいろ危険なことがあったりなんかしたこととがあったもんですから、いろいろ少しもりはいしたことも考えましたが、今はほとんどまず普通のお子さんと、同じようにスケジュールでやっていただいて結構ですと申し上げておりますし、むしろはしかとかですね、予防接種などは、お誕生を越したらなるべく早くやっていただく様にお勧めしております。

予防接種に関連して1つ水疱瘡のことをお話しておきたいと思うんですけど、私どもの経験では、普通のお子さんというのは、はしかと水疱瘡を比べるとはしかのほうが重くなりますよね。かかった場合に。だけどもダウンのお子さんの時には、水疱瘡のほうが重くなることがままあります。で、もうひとつ注意していただきたいのは、はしかというのは、だいたい普通生後6ヶ月以降にかかる。6ヶ月までは、だいたいお母さんから免疫が来てる。ところが、水疱瘡ってのは生まれてすぐからかかります。ですから、水疱瘡は、周辺に水疱瘡が流行ってる、あるいは、兄弟がいて、兄弟が行っている保育園とか幼稚園とかあるいは学校なんかで水疱瘡が流行っている時には、十分注意をする必要があると申し上げております。水疱瘡の予防接種というのは、とても生まれてすぐになんか出来るわけないですから、そういう環境的な面からの配慮が必要だって事を申し上げております。

さて、次に幼児期に移りたいと思います。

幼児期には、そこに、白内障、あっ、その前に大変前後して申し訳ないんですけど、もう一つ
表―1資料に別にダウン症児と罹病性というのがございます。これは、何かといいますと、乳児期、幼児期、学童期とに分けて、それぞれどういう病気にそれぞれの時に起こり易いかというのを、見ていただくための表でありまして、上の方が死につながる病です。下の方が、死までには至らないけれども注意しなくちゃいけない病気が下に書いてある。で、上の方の死因となり易い疾患というランキング、リストがありますが、これは、アメリカの病理学会、日本では全部なかなか亡くなっても、病理解剖ができないケースもありますが、アメリカは病理解剖が進んでいますので、ダウンのお子さんが亡くなって病理解剖をしたときに、どういう病気にかかっているかという、このランキングが書いてあります。そのランキングに、起こり易いものが、こう順に並んでいるわけです。で、その下の各年齢層で、発症しやすい疾患というのが、死ぬほどではないけれど、注意したい病気というのが、その下に書いてあります。これを頭に描きながら、その今の各年齢の時期での合併し易い病気というのが、リストされている。ちょっと前後して申し訳ありませんでしたけど、そういうことです。

幼児期の場合に、まず、点頭てんかんが、間にかかる、乳児期と幼児期の間にかかる6ヶ月から1歳半までの間に起こり易いからということでそこの間になっているわけですが、頚椎環軸変位というのは、これはご存知だと思いますが、頚椎が7本頚椎ありますけれども、一番目の頚椎と2番目の頚椎がずれやすいというのは皆さん良くご存知だと思いますけれども、これが、やっぱりきちんとチェックしておかないと、首に負担のかかる様な運動をして、そして急にズレが助長されて、そして神経が圧迫されて急に歩けなくなっちゃう子とか、急に手が動かなくなっちゃうということがままあるわけです。私も一例、東京で診ている子で、この首のチェックがしてなくて、急に5歳くらいになってから、歩けなくなっちゃった子がいますけれども、やはりチェックは、きちんとしておかなくてはいけない。じゃあ、いつチェックしたらよいか?

一番目の頚椎っていうのはドーナッツみたいな頚椎なんですね。2番目の頚椎がそのドーナツみたいなところに、柱がたって、入ってるわけです。これがずれますと、中にある神経が、ひどい場合には、押しつぶされるというか、障害を起こして、そして、そこから出ている下に行っている神経が全部動かなくなってしまうということですね。ですから、足の方にいっている神経がいったり、手の方に行っている神経が侵されると、そういう四肢が麻痺してしまうということがあるわけです。じゃあ早く頚椎のチェックをしておけばいいかというと、あんまり早くやっても2番目のドーナツみたいな骨の所に入っている柱が、十分形成されていない内に、やっても判らないということがありますので、私たちは、だいたい2歳前後で、2歳くらいになってくると骨の位置関係がしっかりしてくるし、だいたい、歩くのが2歳位ですよね、平均。歩き始めると首に負担の掛かることが起こってくるわけです。それで、そういう時期を選んでやっているわけであります。もしこれが見つかった場合には、首に負担の掛かることを注意しなければいけない。これが、注目されだした当初は非常に過剰反応がいろいろあって、たとえば、保育園とか幼稚園統合保育を一方では勧めているのに、幼稚園の先生保育園の先生がとってもこのことを怖がって受け入れてくれないような、統合保育に逆行するようなことが一時ありましたけれども、これは、十分に幼児保育幼児教育をされている方々にも働きかけて、そのために統合保育を拒否されるということは、きわめて少なくなってまいりました。

それから、虫歯はやっぱり虫歯にしないようにやっぱり予防するということがとっても大事ですね。なっちゃうと治療がなかなか抵抗して大変ですから、かかりつけの小児歯科の先生を作っておいて検診をまめにする。歯並びがだいたい良くないことがありますから、やはり虫歯になりやすい。ですから、早目早目に手を打っていくということが大事だろうと思います。たかが虫歯なんて考えない方が私はいいだろうと思います。

それから滲出性の中耳炎というのがありますけれども、これはさっきお話したように、もともと早い時期に聴覚のチェックをして、何でも無かったからといって安心は出来ない。中耳炎というのは風邪をひいて、繰り返し風邪をひいているうちに、中耳炎というのは起こってくることがあります。これは、中耳とのどっていうのはご存知のように耳管という細いトンネルでつながっている訳ですから、のどの風邪は、いつでも中耳炎を起こす可能性がありますので、そういう注意はしておいていただきたい。

それから眼科はですね、さっき白内障の話をしましたけれど、白内障がなくても、やっぱり幼児期から、定期的に、眼科をみてもらっておくということは、大切じゃないかと思います。これは学童に行ってもしかりであります。とにかく初めはめがねを掛けることに抵抗を示すことがありますけれど、やっぱり、なかなか目にフィットするような検査はなかなか協力してくれませんから、フィットしているような視力チェックはなかなか出来ない場合があります。だけども練達の小児眼科医であれば、ある程度の視力のことはわかるようです。ですから、1回では無理かもしれませんけど、何回か繰り返しチェックをすることによって、だんだん目に合う、いやがらないでかけてくれるめがねにいくことがあります。ですから、やはり1、2回のことであきらめないで、かける必要のあるメガネであれば、出来るだけ、かけられるような努力をしていただきたい。それが、世界を広げていくということとつながると思うからです。

それから静岡県はとても気候のいいところですから、あんまり、それでもいますね。しもやけのできる子が。いますけれども、私はかって山梨大に4年ばかり行っていたことがありますけれども、山梨は寒いから、特に北の小淵沢とか清里とか北の方からやってくる子どもは全員しもやけです。唇がわれている。唇はとっても。山梨にいた頃私は機械を借りてきて皮膚の表面の体温を計ったことがあります。もちろん手足、しもやけの出来る手足は低いんですけれども、唇が以外や以外低いんですね。一番低かったですね。しもやけと同じように循環の不全のために、唇が割れちゃうのだと思うんですね。ですから、あれは割れてしまうとひと冬直らないですね。ですから、私はなる前に秋口になってそろそろ涼風が吹きだしたら予防、きちっと。外出から帰ってきたら暖かい蒸しタオルでほっぺたも含めてですね、蒸してあげる。そしてリップクリームをつけるならつけるという、そういうしもやけのやっぱり予防に注意するということです。

それで、だいぶこう小さいところで時間を割いてしまいしましたけど、幼児期の、あっ、それから訓練に関係してもうひとつ注意していただきたいのは、はいはいに関係して、はいはいの仕方をやっぱり、注意していただきたいと思うんです。
ほうっておきますと高這いをする子が多いですね。膝をつかないで這う、お猿さんが這う姿勢を想像していただければいいんですが、きちっとそのまま、高這いのままでいきますとダウンのお子さんが、大きくなった歩き方を見てみますと、極端な場合には、こう股をひろげてこうやって歩く、肩を少しかがめてですね、こうやって歩く子が多いですね。やはりここを締めたいんです。きちっと。
 そのために、はいはいをしたらば、きちっと膝をついて這うことをやかましく言います。あわせて、はいはいをするときに膝を突くと同時にかかとをですね、ちょっと後ろの方は見にくいかもしれないけれども、はいはいをするときに、普通こういうふうに足の関節を曲げないで這いますよね。この足の関節の力を強くするために、私はできるだけこういう風に、ここを曲げて這うように勧めています。つまり、はいはいをして滑り台を這ってあがる姿勢をイメージしてください。足の関節を曲げないで上がれませんよね、滑っちゃいます。だから、きちっと足のかかとを滑らないようにして滑り台を這って上がりますよね。はいはいをどんどんはじめたら、出来るだけここを曲げて這うように、お勧めしております。それは、私は絵がへたなもんだから、(笑)
 こういうふうにだらんとしちゃうけども、えーと、どういうふうになるんだろう。(笑)ける?どういうふうになるんだろうな。あの、滑り台を這って上がるときには、ごめんなさい、あまりうまく描けないです。要するに、滑り台を滑って、滑り止めにするように足首を使って。これをするとなぜいいか?というと、足首を鍛えるってこと、力が入りますと、歩く為にはあそこを強くする必要があるわけです。私たち外来で子どもさんを診るときに、もうそろそろ歩き始めるかどうかみるとき足首の力をみます。そろそろ歩き始めるなと思ったら足の関節が非常に強くなります。それを鍛えるという意味で、はいはいの仕方を工夫する必要がある、そういうようなことを申しております。
幼児のところで、今幼児期の統合保育はほとんど日本全国、北は北海道から南は沖縄の石垣、西表、波照間といったような最南端の離島まで、ほとんど統合保育が出来るようになっています。大変これはうれしいことだと思っております。一昔前は、なかなか統合保育、受けいれてもらえなかった。今やこれが受け入れてもらえるようになったので、子どもたちも幸せになったなあと、思っております。しかし、あまり時にいき過ぎちゃっていて面倒見過ぎてくれすぎちゃうところがある。つまり、自立しようとする子どもたちの自立の芽をつんでしますような保育をするところがあるんですね。せっかくいろんなことがが自分でできているのに、幼稚園、保育園に行くと、みんな周りの子どもたちがお手伝いをしてくれちゃって、いろんなことが出来なくなっちゃうということがあるので、そういう統合保育をやっていく場合に、やっぱり、保育者が十分気をつけて保育をしなければいけないということを、機会があるところで、お話が出来るところで、私はお勧めをしております。

 さて、次は学校なんですが、やっぱり就学が、まだこれからという感じがあります。就学は、こういう子どもたちが就学する場合、3つのコースがあるというのはご存知ですね。まず、地域の普通学級に就学をする。それから、身障学級に就学をする場合と、養護学級に就学をする場合と、3つの就学の方法があると思います。就学はその就学時にお子さんがたが、どのくらいの能力があるかによって、子どもたちの能力に合ったクラスを選択をすればいい訳ですけれども。

それから、同じ身障学級で学校によってずいぶん違うと思います。受け入れがとってもいい身障、普通の子どもたちとの交流を沢山取り入れて、難しい教科だけ別にやって、出来るだけ普通の子どもたちと一緒に学んだり時間を過ごせるという、そういうふうな時間の取り方をする身障学級もありますし、形だけ身障学級というのを作っておいて、見かけは一応やっていますよ、だけど現実はセパレートしてやっている学校もあります。いってみなくちゃわからないですね

それから、普通学級もいろいろです。本当にお客さんにしてしまう、一生懸命やってくれない学校もありますし、本当に真剣に普通学級で教育してくれている学校もある。ということで、学校へ行って見なければわからないのが現実です。ですから、就学の相談があるときは、必ず私は出来るだけご自分のお子さんが行こうという学校が必ずこの3つあるはずだと。この頃かなり選択が自由になりましたから、地域によっては身障学級、普通学級もいろいろ複数いける可能性がでてきましたから、やはりいこうと思える学校をみんな必ず見せてもらって、そして、うちの子はどれがどうもあってるかということをきちっとみきわめたうえで、選択してもらいたいとお話しております

ところが、これからちょっと制度が変わっていくだろうと思うので一概にはいえないかもしれないけれども、いままでは普通学級にいれたけれども、どうもうまくいかないのでこれを身障学級に移したいと、普通学級から身障学級にいくというのは割合容易でした。身障学級にいったけれども現実にはそれでもなかなか難しい。養護学級の方がいい場合にはこれも割合容易にいける。ところが、いったん身障学級に入ってしまうと、どうも身障学級では物足りないし、普通学級で十分やっていける能力がある。ということで普通学級にいきたいといってもなかなかいかしてもらえない。それから、養護学校から身障学級、こういういきかたもなかなかむすかしい。そういうのが、現実でありました。そうしますと、ご両親の心理としては、それならばまあ1年先2年先は別として、とにかく今ちょっと背伸びをしてもこの△の方を選ぼうという、そういうことがよく起こりました。そういうことで就学はいろいろ問題があったのですけれども、近い将来は変わろうとしていますけれど、もうすこし自由に、出来るだけ普通の学校でというふうになるという空気ですけれども、現実はなかなか、すべりだしたら却って難しいことが起こるかもしれない。やっぱり注意深く見守っていかなくてはいけないと、私どもは思っております。

やっぱりまだ、小学校の就学についてはこれから統合保育のようにうまく展開していけるかどうか、もう少しきちっと見守っていく必要があるなと、私どもは考えております。

さて、次に思春期の問題に入りたいと思いますが、そのまえに、糖尿病とここに書いてありますね、学童期の保健のところに、これは、私も何例か経験があるのですが、小学校の高学年5年生6年生くらいになって糖尿病になって、学校で発作を起こす、低血糖の発作をおこすという経験を何例かしています。私どもは定期的に私たちの血液チェックをするときに必ず入れています。

それから、特に学童期に、私どもの経験では9歳、小学校の3年生,4年生位かな、そのあたりで白内障がわりあいおこってくるというのがあります。ですから、このあたりの眼科的なチェックっていうのは、ぜひしておきたいと思っております。

さて、思春期に入りたいと思いますけれども、思春期は保健の面で注意したいのはやっぱり甲状腺、それから肝機能、もちろんそうです。そろそろ脂肪肝のおこってくるようなことがありますので、太ってるような場合ですね、肝機能、甲状腺機能の検査を入れますが、特に尿酸ですね。高尿酸血症は気をつけないといけないと思います。ご存知のように、中年過ぎの男性はしばしば高尿酸血症がきます。これは男性の方にはおわかりです。ご主人の健康診断の時などいつも問題になるようなことがあると、そういうことを耳にされてる方もあると思いますけれども、中年過ぎにならなくても、ダウンのお子さん方は、思春期から尿酸が、特に男の子の場合尿酸が高くなってくることがあります。特に太った男性のお子さん方は気をつけなくてはいけないです。おこってくる臨床症状としては、高尿酸血症というのは足の親指の付け根が赤くなってはれてきて、なかなか靴がはけないっていうことをお聞きになったことがあるかと思いますけど、こういう症状が出てくるのはもちろんですけれども、出てこないサイレントなケ―スっていうのはたくさんあります。激痛はもちろんわかりますけれども、そうなってくる前のチクチクとした、そういう強烈な痛みでない場合っていうのは、しばしば痛みを訴えるのが下手ですから、何もわからないうちに高尿酸血症が進んでいくことがあります。ですから、必ず尿酸のチェックというのはする必要があると思います。高尿酸血症になった時、少し尿酸が高いなとなった時、すぐお薬出しちゃうケースもありますけれども、私の友人で高尿酸血症を専門にしている東京女子医大ので、この高尿酸血症センターの所長をやっている友人がいまして、彼はぎりぎりまで薬を使わない主義なんですね。で、彼から教えてもらった注意としては、体重のコントロールと水分をできるだけ多くとるということ、そういう生活の管理をきちっとするということで、なんとか乗り越えられないかというふうにしてあるわけです。ではなぜ、体重のコントロールはおわかりだと思いますが、水分を多くとるという事は、高尿酸血症がおこると腎結石とか石がたまっちゃうんですね。それをできるだけ流すということで、水分を多くとった方がいいということを勧めております。それからよっぽどひどい場合には薬を使います。使いますけれどもなるべく薬は使わないで済めば済ませたいということです。

それから、思春期になってお嬢さんの場合にはもちろん生理がおこってくるわけですけれども、これは普通のお嬢さんたちは、なぜおこってくかということを学校の保健の授業なんかで理屈から入っていく教育を受けているわけですけれども、ダウンのお嬢さんたちはなかなか理屈が理解できない場合がありますから、むしろ、おこった時に血液を見てびっくりしないっていうことと、きちっと手当てができるというこの二つが克服できればいいわけですから、これは私どもは、そろそろそういうことがおこりそうだなと時期がきたらば、お母様なりがご自分の手当てをなされる場、あるいは女のご姉妹がおられれば、そのご姉妹の手当ての場につれてきて見せる。そしてその血液を見てもびっくりしない、きちんと手当てができるということが、克服できればいい。だいたいうまくいっているようで、だからそんなにご心配になることはない。

それから、男の子の場合ですが、これはなかなかお母様方がちょっと苦手にされるだろうと思いますが、大事なことは基本は彼らにも青春があるということをきちっと認めるということが大事、出発点だと思います。お母様方は、やっぱり異性ですから、男の子、いつまでも小さい頃のかわいい状態でずっといてくれればいいと思われるかもしれないですけれども、やっぱり何かこう・・特に、思春期になってきた男の子っていうのはお母様方としては苦手ですね。

でも、やはりそのマスターベーションをするような行為を見ても、禁止してしまうっていうのは、まずい対応ですね。これはルールをきちっとつくる。どういうルールかっていうと、まず基本はさっきお話したように、思春期があるということを認めてあげるということから出発して、そのどういう形でマスターベーションするか・・いろいろあるかと思うのですけれども、私が一番多く経験するのは、うつぶせになって下腹部をこすりつけるということ。それはまずどこでやってもいいということではない。場所を決めてやる、人前ではやらない。それからもし、パンツが汚れればそれを最低限洗濯かごに入れる、あるいは、私がこのごろよくお勧めするのは、自分である程度下洗いをさせることをきちっとできます。そういうことをやる子は。だから、そういうルールづくりをきちっとするということでこれは何とかしのげるのではないかというふうに思っております。

それから、やっぱり思春期ですから異性に対しての関心というのは非常に強い。これも当然ですし、やっぱり認めてあげる。例えばみなさん方もご経験がおありだと思いますけれども、合宿なんかに行くとボランティアでついてきてくれる大学生とかですね、若い異性のボランティアにはとってもいうことをきくんですね。でも、我々とか・・いうことをきいてくれない。それはもう当然なんでそれはそれでわかる。これは青春だなというふうに思いますし、それから非常に好意をよせる異性がでてくるということがあってもかまわないけども、やっぱり大事にならないように周りで充分気をつけなくちゃならないっていうのはあるんですね。というのは、これも2,3年前なんですが、私がみている子で経験ですけども、わりあい程度がいいもんですから、例えばお勤めをして盛り場を一人で通っていく子がいるんですね。渋谷あたりを通って通勤してる子がいて、で、このところ2例経験があるんですが、1例は渋谷のラブホテル街でですね。ウロウロしてるところで保護されちゃった、というのがあります。今までじゃ考えられないことですけれども・・お勤めしている子です。それからやはり渋谷なんですが、お金を融資できるような簡単に勧誘してくれるようなカード、チラシを渡すようなのにつかまって、その子はその職場で非常に好意を寄せた男性がいたもんだからそれに貢ぎ物をするわけです。自分の給料だけじゃあれなんで、そのサラ金みたいなのにかかってそれがたまたま発覚して・・そう大事にならなかったけれど・・大事っていうか・・ある程度・・50万位ですか、被害にあっちゃってお父さんが、結局最後は逮捕したんですけれどもそういうようなちょっと前じゃ考えられない。しかし、今は周りの社会がそういうふうになってしまっている。やっぱりとても残念なしかしやっぱり思春期に絡んでおこってくるようなことっていうのは現実におこってきていることで、やはり周りはとっても注意しなくちゃいけないと思っています。そういう意味で大事にならないような注意っていうのは今までしなくてもいいような心配事をやっぱりしなくちゃいけないようなそういう時代にはなってきているということであります。 

さて最後にいよいよ成人期のことですけれども、成人期の中ではまず健康に関しては白内障をあげます。私の経験では20代になりますとかなり89割くらい白内障が発症してきています。もちろん軽いのは点状のやつから始まりますから、ほとんどふつう視力に障害がない程度、そういうのからかなり濁ってきているのもあるということで、そういうのを全部ひっくるめて89割あります。ですから眼科のチェックというのは定期的に行う必要があるということと、それからやっぱり今私どもの経験で一番大きな割合ケースが少なくないっていうのは、そこにある退行現象であります。

昔は「うつ」というようなことでいってましたけど、非常にある時期から日常のアクティブィティーがガタッと落ちていく昼と夜のリズムが逆転していく、人に対する人との関わり合いをうまくできなくなってくる、そんなようなことがありますね。そういう子どもたちの臨床状としては、歩き方がパーキンソンを感じさせる歩き方、大股で歩けない。パーキンソンの方たちというのは歩き方がこういうふうに歩きますね。お年よりなんか時々街でおみかけになると思います。それから顔の表情が非常にちょっと専門的にいうとマスケンアールティッヒというドイツ語でいうマスクのような、表情がないようなそういう表情。それから字を書いたり絵を書いたりしますと異様に小さい字や絵をかきます。たとえばここに画用紙があると、象の絵を書きなさいというとここにこんなふうに書く。(すみっこに小さく)字も大きく堂々とした字を書いていたものが字が小さくなっていくというようなことがあります。また、私ども外来で見てますと、ふつういつも外遊び、部屋に入ってくるときにちゃんと私と視線が会うですが、ところがもうぜんぜん私の顔を見ない。こううつむいて私の顔をみないですね。うつむいて入ってくる。そういうのが、まあいろいろ全部症状が揃うとは限りませんけれども、程度もさまざまですから・・そういうようなかんじです。なかなか治療が困難なんですけれども、私どもの経験では時に器質的なからだに病気を持っていてそれがこういう症状になってくることがある。一部にあるんです。例えば脳腫瘍がある。私が前にもう今から10年くらい前ですけれども、こういう退行の方々を、こういう症状のある方を集めて25例見て、その中に3例、脳腫瘍が1例とあと2例は甲状腺機能障害があったんです。こういうふうに医学的な用語でいうと器質的な疾患、もともとその体に病気がある、そのためにおこってきている。これは治してあげなくてはかわいそうですね。ただ精神的な問題ということで片付けるわけにはいかない。ですからそういう器質的な、こういうふうな退行現象の方を見たときには、必ず、まず器質的な疾患がないっていうことをルールアウトしておかなければいけない。ですから、まずそれを検査する。そして今お話したように25例のうち3例ありましたが、大部分はそうではないわけですね。なにか心理的な精神的なことが基礎にあっておこってきているのであろうと、それに対して治療はなかなか難しいですね。そういう時には、私も専門外なものですから精神のこういうことに詳しい先生にご紹介をして行ってもらって治療をしてもらうんですが、なかなか治療に抵抗する場合が多いですけれども、良くなるケースももちろんあります。何年かかかりますけれども。すばらしく良くなるケースが何例かあります。ですから治療はやっぱりする必要がある。それから、やっぱり原因が何かあるんだと思うんですけれども、おこりやすいそういう傾向があったときには早く芽をつんでいく必要があるだろう。予防するってことがとっても大事だと思いますね。やっぱりそれぞれの原因はそれぞれのケースによって違いますから一概に言えないですけれども、こういうお子さん方っていうのは共通して言えることっていうのは、新しい環境が変わった時にとても適応がうまくいかない場合がある。弱いですね。例えば作業所の指導する方が変わった。とてもよくやって下さった方、ウマが合ってた方が変わるってことが引き金になるってこともありますし、作業所の都合で場所が変わるって時におこってくる場合もありますし・・共通していえることは、とにかくなんか環境が変わったという時に気をつけなければいけない。それから、なんかこう友達との関係がうまくいかないとか、どうも友達が気に入らないことを言ったとか、友達じゃなくても職員が傷つけるようなことを言ったとか、そういうようなことがきっかけになっておこってくることがある。ままある。そういう環境の変化に弱いので、何かこう環境が変わった時には、注意信号がでていないかどうかっていうことを気をつけていかなければいけないんじゃないかなということを思っております。

それから、突然死というものがありますけれども、急になんでも今まで元気にしてたのに急に朝起きてこない。そしたらば呼吸が止まっていたということが時にあります。あの乳幼児突然死症候群で赤ちゃんの場合はよくありますけれども。ダウンのお子さんの場合でもやっぱり気をつけなくちゃならないことがあります。それはあのイビキ、なんかかいてて急にイビキが止まっちゃうとかですね。あるいは寝息が急にとまってしまうとかですね。長い間止まりっぱなしであるというようなことに気づかれることがございます。そういうのはだいたい、これも山梨にいた時に私が経験した例ですが、一晩寝息を監視しているのはとても難しいことですから、一晩おきてなくちゃならないから、脳波を1晩つけてですね、呼吸を見るってことができるんですね。終夜脳波っていうこれをやります。やって一晩に120回くらい呼吸が止まってしまう子が、いました。大人です。それはイビキがなかなかこう頻繁に止まるので、ということで一晩つけて入院してチェックしました。これはふつうは呼吸は止まっても血液の中の呼吸が止まると炭酸ガスが増えて酸素が低くなりますから、血液の中の酸素濃度が下がってくるので炭酸ガスの濃度が高くなってくる、それに対して人間の頭の中に脳の根についているところの呼吸中枢がそれに反応してまたスイッチがはいるわけですね。それでまた呼吸が始まるんですけど、スケッチの入り方がにぶいとやっぱりなかなか呼吸がそのままとまりっぱなしであったりすることもあるでしょうし、で、ダウンのお子さん方は、アデノイドとか扁桃腺が大きかったりすることがあって、そういうのはふつう年齢が長ずると思春期過ぎるとふつうは小さくなってくるんだけど、なかなか小さくなってこないとか、あるいは気管の入り口のところの、仰向けにねているとふたがしまりやすくて、そして気道が狭くなってくるために呼吸ができない。だから風邪なんかひくとますますそういうところの気道がむくんだりなんかして、気道がふつうよりも狭くなってくることがありますから、ダウンのお子さんとかよくうつぶせに寝ちゃうとか、仰向けに寝ていると苦しいからうつぶせに寝ているとかすわっちゃって寝ていることもありますね。えびのような形で寝てるとか。あれはやっぱりみんなそれぞれ自衛なんですね。気道確保するっていう意思があるんだろうって思います。そういう時に無理やり仰向けに寝かせるのっていうのはやっぱり気道の確保というのは難しくなるでしょうから、かぜをひいている時にはある程度背中にへんな姿勢だけれどもクッションかなにかして少し傾斜をつけて寝かしてあげると・・そういうことはしてあげた方がいいのかもしれません。

余暇の過ごし方というのを私がここに書いてあります。これは先ほど退行ということとも関係があるんですね。だいたい学校を卒業して通所施設に行くとか、中にはお仕事をしている方もおられます。そうした時にこのごろはずいぶん土曜日がお休みのところが多いですね。土曜日お休みだと日曜日ももちろんお休みで、何もないと結局うちで無為に過ごしてしまう。ビデオを見たり、なんかからだをあまり動かさないで、人とも交わることなく無為に過ごしてしまうことが多いのですけれども、やっぱり先ほどお話しましたように、いろんな人との交わりとかあるいは環境とかでおもしろくない、本人の意にそまないようなことってあるだろうと思いますよね。これは我々だってあります。だけどもふつうの人は気持ちをどっかで切り替える場ってのがいっぱいある。だけども彼らは非常に乏しい。ですからこういう気持ちを切り替える、意にそまない不愉快なことがあっても、気持ちをどっかで切り替える場があれば少しは気が晴れる。さっき言った退行の予防ってことにもどっかでつなっがてくる。そういう意味ではやっぱり余暇の使い方っていうのは、とっても大事だろうと思うわけです。ここでも、静岡の場合いろんな活動をなさってらっしゃる、とてもいいと思うんですね。余暇の過ごし方というのは、そういう事で、いろいろその退行現象ということを予防することにもつながってくるだろう、という風に思います。

さて最後に、一番最初に申し上げましたように、ダウンのお子さん方の寿命が非常に延びてきた。大変喜ばしい事ではあるけれども、一方でご両親よりも長生きするお子さん達がどんどん出てきてます。そして、こういうお子さん方も、やっぱり将来的には、結婚という問題も私は夢ではないだろうと、たぶん今世紀の後半は、もう世の中に堂々と結婚という事がですね、するしないは別として、こういうお子さん方の結婚っていうことが、堂々と社会の中で語られる話題に堂々と出てくる時代になってくるだろうと思われます。

で、大きくなってくれば、それから、ご両親よりも長生きするという事があると、やっぱり、どういう風な環境の所で生活していったらいいだろうかという事が起こってきます。そういう意味では、グループホームをやっぱり視野に入れて、まあグループホーム、大分あちらこちらで具体的にやっている所が出てきていますけれども、例えば、こういうお子さん方が完全に独立して、自立して生活してくるという事はなかなかそれは難しいだろうと思います。けれども例えば、(板書)こういった共通のスペースがあって、食事やなんかはここでみんなでとる、或いは、ここで団らんする、テレビを一緒に見るとかね。で、ある時間がくれば一人一人プライバシーを守るための個室ができる。一人になりたければみんな行く。だけれども、彼らだけで生活することは困難ですから、必ずハウスキーピングする人が一人いる。そういうことでプライバシーを守ることができ、そして、ちゃんと一応の個人生活を営んでいく。こういう風なスタイルであれば、色々克服しなくちゃならない問題があります。あるけれども、結婚という事だって、場合によってこういう形でできるかもしれない。つまり、こういう形の、何もこんな形とは言いませんけど、スペースは色々工夫しながらだけれども、共通の場に、こうサテライトになっていて、プライバシーを守っていく事ができる。そういう形でのグループホームというのを考えてやって行こう、という所が出てきています。従って、こういう事がきちっと上手く運営し展開していく事ができれば、多分御両親もそんなに心配することなく後の事を、そう気がかりも薄れて行く事ができるんじゃないかな、という風に思っています。なかなか難しい問題が沢山ありますけれども、こういう希望もやっぱり将来にはあるんだという事で、とりあえず私のお話はこれで終わりにさせていただきまして、あと御質問があったらお受けする、という事にしたいと思います。


<質疑応答>

(司会)先生ありがとうございました。幼児期から成人するまで、親亡き後の問題まで触れながら長い時間話を頂きましたけど、いい機会ですので、もし先生に御質問があればマイクを持っていきますので、どうぞ忌憚なく手を挙げてお聞き下さい。

Q.今度高一になりました女の子なんですけど、ダウンのお子さんの体力面で、ずっと今まで、小学校とか中学で言われ続けて、ちょっと分からなかった事なんですけれども、体力を付けるようにという事を良く言われるんですけども、心臓、心室中核欠損の手術をしたんですけども、やっぱりこう、あれは何からくるのか、機能的というか・・何か、体温が、寒くなるとすごく下がって、冬の朝など、すごく起き辛くて、本当に固まって動かなくなってしまう。で、暑くなると、また今度は体温が上がり易いというか、そういうのがあったりして、体力っていうのは、本当に一般と同じように訓練によってついてくるのか、その辺りが今までずっと疑問だったんですけど、すみません、宜しくお願い致します。

A.はい、そもそも体力とは何か、という事なんですけど、あまりそういう事はあれとして、今ひとつは、体温の調節の事の絡んだお話がありました。これはあると思います。それは特に末梢の血管、普通私たちの身体というのは、末梢の血管がその時の気温等によって閉まりが、寒くなると閉まるわけですよね。それから暖かくなってくると緩んで、それでもってある程度体温を調整している。発散させたり、体温の喪失を防いだり、ということがあるわけです。そこが、普通の人のようにコントロールが非常に上手くないんですね、普通の人よりも。ですから、さっき霜焼けができやすい、というお話をしましたね。で、あれは、そういう血管の収縮のコントロールが上手くできていない事もあります。ですから、養護学校ではしばしば体力をつけるっていうんで、冬になっても裸足でもって学校の廊下を歩かせたりですね、裸足でもって体育をさせたりっていう事をする学校がありました。私はその話を聞いて、それは普通の、まあ、ハンディキャップのある別の、体温の調整がそう下手でないようなハンディキャップのある子はそれでもいいかもしれない、体力を付けるという意味で良いかもしれないけれども、ダウンのお子さんはダメだと、それは今お話ししたように、末梢の血管の収縮をしたりするコントロールが上手くないから、だからダウンの子はそれはしないで欲しい、という事を申してそれをやっと止めて貰いました。それは、養護学校で、特に、保健体育の先生方が、体育会系の先生方がそれをおっしゃるんですね。(笑)それで、ちょっとやり合った事がありますけど、良く理由を一緒に話してですね、根本は体力はやっぱりつけたいっていうか、つけると言う事は私も賛成なんだと。しかしやり方をやっぱり工夫して欲しいという、そういう事でお話をしました。それで今、体温の事でもって、間接的に、やっぱり体力を付けるという訓練には、体力を付ける場合にも、やっぱり、個々に配慮しなくちゃならない事がある、という事と、心臓もですね。大体心臓が悪いと周りでは過度に色々運動を制限したり、或いは具体的に遠足に行ったりする時に少し距離を短くするとか、マラソンの時に距離を塩梅するなどという事をします。する事がありますけど、心臓の方の先生がですが、きちっとチェックをなさっているだろうと、定期的に診ていただいているだろうと思います。手術して現実はかなり体力的に、心臓の手術をした後だったらば、随分ついている場合がありますので、その心臓の先生が許される範囲であればですね、私は普通にやって構わないと思っています。ただ、気温とか気温の変化等については、今言ったような注意は、手術した後でもしなくてはならないだろうと思っています。それから水分の取り方ですよね。これは、心臓の先生が、多分、やっぱり運動すると水分を取る、とありますし、汗のかき方が色々ありますので、診ていただいている心臓の先生に水分の制限があまりやかましく言われていなければ、普通になさって大丈夫だろうと思います。それで宜しいでしょうか。

 

(司会)宜しいですか?今の御質問。他には何かございますか?

 

Q.先生、ちょっとこれは自分の子供の事という事ではなくて、私は保健所の方の療育教室に入っているものですから、その中で乳児から幼児全般の子供達に対して、某療育施設のPTとかが入る事がありまして、その方達が、その筋肉が弱いとか、全体的に運動はゆっくりなわけですから、それに関してこの子は筋肉が弱いから、とか、という風におっしゃられると、お母さん側としては、何とか手立てを講じたいと思うのが親の気持ちだと思うのです。そういう事で、定期的にそういう療育に週1だとか通って訓練を受けたいという親の希望が、すごく強く出てきているんですよね。先生の今までの経験の中で、やっぱり、そういう事をした方がいいものかどうか、それからやっぱり、その子その子の発達の流れというものがありますので、私個人としては、そういう風な事は教えて貰うものであって、後は日々母子関係、親と子のつながりとして、ふれ合いとしてやっていく事が、すごく大切ではないかと、何かこう投げっちゃうっていう訳ではないんですが、どこかの専門家にやって貰う事がいいことであって、日々の積み重ねの親の努力みたいな事が、ちょっと忘れられているというか、まあホッとしちゃうというか、そんな傾向が見られる事を私としてはすごく苦慮っていうか、心配しているんですね。

もう一つは、同じ関連なんですけれど、支援費制度という事ができましてね、満2歳未満の赤ちゃん、ダウンの子を持ったお母さんが、下の子もいて大変だから、その子を支援費を使って預けると。

?ダウンの子のお子さんですか(日暮先生)?

そうです。(ダウン症の)お子さんを預けて、下のお子さんに関わったり、お母さんが見ると。と、その子が大泣きするわけですよね。お母さんから離れちゃうって、お母さんが見えないと。それは当たり前だと思うんです。私は、やっぱりあの、普通でも2歳位までは母子関係の愛着とか、アタッチメントの育ててくって言う事の非常に大切な時期だと思っていますので、そういう制度があるんだから、病気とかであればやむを得ないんだけれども、いけないということではないんだけれども、毎日3時間とか預ける事に対して、その制度なんだから使う事はまあいいんでしょうけど、そういう子供達の心の発達という視点から見た時に、その辺をどういう風に考えたらいいか、果たしてそういうものをね、どんどんどうぞ、っていう風な方向で流れていっていいものなのか、ダウンのお子さんという視点において見た時に、どういう風に判断していっていいのかなって言う事を、今、私すごくどうだろうって。その2点で、先生のお話を伺えると有り難いと思います。

 

A.分かりました。第1点はですね、もうおっしゃる通りです。私も訓練する、それで訓練した、ある所に行って訓練して貰う事によって安心してしまうのでは、それは意味が無い。私は、週1ぺんでも、月に1ぺんでも、とにかく行って、そこで学んだ事を毎日家でやると。それが大事だと。で、毎日やって、そのやった事の成果を、例えば、1週間とか2週間とか、月1ぺんとか行って、そこで教え貰った事を毎日家で繰り返しやってきた事の評価をして貰う。そうして次のプログラムを教えて貰う、或いは、同じ事を繰り返してやる。そういう事で、行った事で安心しては全然意味が無いと思います。だから、それはおっしゃり通りです。

第2の支援費もそれもそうですね。こういう制度があるから、安心して活用するという事は、どうしてもそういう手が必要な時には活用していただいていいと思います。けれども、そこでお母さんの手を離れる事は、あまり良い事じゃ無いでしょうね。やっぱりお母さんとできるだけ一緒にいれる事が、子供の発達の為には、とっても大事な事だと言う事を認識して頂かなくちゃいけないだろうと思います。支援費制度は本当に、例えば、他のお子さんが病気であるとか、下のお子さんが病気であるとか、或いは、ご家族で何か具合の悪い事があってダウンのお子さんがいるととてもお家の、例えば老人の方がおられた時のケアが落ちてしまう、など、それはそれで結構。そういう事の為にある訳ですから。だけども、やっぱりお母さんとのコミュニケーションを最大限に大事にして頂きたいと思います。ですから支援費制度も多分、根本の精神は、そういう事だろうと思います。

 

(司会)宜しいでしょうか?他にはございますか?

 

Q.日暮先生、ありがとうございました。日暮先生は、私の仕事の大先輩でいらっしゃって、長い御経験での貴重なお話を頂いたんですけど、2点お尋ねしたいんですけど、青年期の退行と突然死の問題です。退行という言葉自体は、医学・・学校の先生から出たような言葉で、医学的に言う退行と、私も色々調べたんですね。精神科なんかでも。ちょっと違うんじゃないか、という感じがしたんです。それで精神科の先生は、退行という名前とは違うと、はっきりおっしゃる方もいらっしゃるんですね。で、中で、例えば普通の一般のお子さん達も、このような状態っていうのは思春期で起こる事があると、その時には退行という名前は付けていないのに、ダウン症だけ何故退行というのかなって、という疑問もありまして、これはもっと広いものじゃないかなと思うんですね。一般的にダウン症だけではなくて、他のプラダビリー症候群の方なんかで思春期で起こるような精神状態っていうのとも非常に似ているんで、何か共通な、思春期ぐらいから、そのダウン症の方の思春期が長いわけなので、余計その時期というのが長くて回復しにくいとか、そういう事あると思うんですけれど、一般のお子さんにもありがちなものっていうものを、考えた方がいいんじゃないかって思っていますが、先生の御経験の中で、うつ病であって治療されて良くなった、またはうつ病という風に診断が考えられる方はどの位いらっしゃいましたでしょうか?

 

A.さあ、そうですね。はっきりとうつ病という、他の事、他の臨床症状と言うのは、あんまり、うつ病からはちょっと外れているっていう、そういう意味であればですね、純粋にうつ病だけっていうことであれば、それはうつ病かなっていう印象は、半分ぐらいはありますよね。だけどそれは、時期よってうつ病だと思っていても、そうでないという事があるし、だけども、はっきり調べた事は無いけれども、大体概数半分ぐらいな感じはあるですね。だけども、経過とともに変わってくる事があるので、最終的にはどれ位って言う事は、言えないと思いますけれども。

Q.外国の報告で、うつ病のダウン症の発生頻度は、日本の一般の人達の発生頻度とあまり変わらない、というのが出てるんですね。この間の小児科学会で、4月だったんですけど、愛知県コロニーの先生方が調べられたのでは、退行と診断された方達で、うつ病の治療が効いた方がかなりあるという報告をされていたんです。うつ病の薬も今はかなり改善して、もちろん薬だけでは治らないので、精神療法とか、そういうものをやっていく必要はあると思いますし、単純なうつ病の症状でなくて、やっぱりダウン症のお子さん特有の、例えばファンタジーが非常に豊かであるとか、やっぱりそんなような事っていうのは絡まってきて、非常に症状を複雑にしてるんじゃないかなと、そういう仮説をちょっと立てているんですけど、いかがでしょうか?

 

A.うつ病は確かに、チョイスとして、投薬のチョイスとしては最初にうつ病の薬から始まっていく事が多いですね、いわゆる退行の中で。それで軽快を見ていく場合と軽快をあまり全然効果が無いって言う場合と・・でいて、かなり、使う或いは治療効果を見ていくのに、時間的な経過を随分見なくちゃならない。長期にわたって見なくちゃいけないって事があるものですから、そこで先生が言われたどの位のパーセントっていうのが、非常に難しいのが、その1つだろうと思います。だから、最終的に結論が出るには、もう少し経過を見なくちゃいけない事と、ケースを沢山集めなければ何とも言えないという事で。だけども、薬のチョイスとしては、やはりうつ病の薬に対しての薬のチョイスからまず入っていくのが普通のようですね。私も投薬は、私と言うよりは、むしろ精神科のドクターにやって貰っているものですから、ちょっと私としてはっきり事件例がどの位という事は、今お答えできないですが。

 

Q.突然死なんですけど、先ほど先生もアデノイドとか扁桃の事をおっしゃりましたけど、この突然死された中でアデノイドとか扁桃が大きかったというデータは、どれくらいの方、とかそういうのは出てますんでしょうか?

 

A.その突然死のですね、例が、私が経験というか、そんなに数が沢山あるわけじゃないけども、大体すぐに突然死だったという事を報告を受ける事がほとんど無いんですね。後から、御家族から御報告があって、例えば1月先とか、或いは1週間くらい後の事もあります。直後では無いのです。従って、解剖できないんですよね。本当は突然死があった時には、必ず解剖ができてるととってもいいんですね。それが残念ながらできてない。大体が、家庭でそういう事が起こっている、という事で、先生が御質問になった事を含めてですね、医学的なもっと、いろんな深い、他の身体の中で起こってきた??的な変化も全部ひっくるめて、データが非常に乏しいというのが現状であります。

 

Q.先生もそうだと思うんですけど、私も割と、例えばいびきをかく方とか、何か呼吸の止まる方で、アデノイドとか扁桃腺が大きい場合は、手術をやっぱり勧めますけど、耳鼻科の先生が、この位は普通と同じだからいいんじゃないか、と言われる事があるんですね。そうしますと、やっぱりダウン症のお子さんは普通と同じサイズであっても、気道の筋肉の形成とか、気道の大きさなんかから考えると、やっぱり問題は大きくなるんじゃないかなと思うんですね、同じ扁桃の大きさ、アデノイドの大きさでも。そこら辺を、なかなか耳鼻科の先生がご理解して頂けなくて、私たちもしょっちゅう、しつこくは言っているんですけど、いかがでしょう?

 

A.そうですね、そうれはもう、まさにそうで、耳鼻科の先生によっても、随分お立場、お考え、1つの事に対しての考え方が、色々様々ですので、ちょっと、一概に言えないんですが、私もできるだけ色々理解をしてくれる先生方を、耳鼻科の先生の枠を広げていく、という非常に遅い歩みなんですけれども、そういう風に仲間を少し増やしていくという、そういう事で今やっております。

 

どうもありがとうございました。



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